38歳が挑む不動産投資|経済的自由を目指す第2話|物件探しの第一歩

資産運用

◆ 第2話 ──「物件探し、はじめの一歩」

日曜の朝、村井直人は早く目が覚めた。
前回のセミナーから一週間、頭の中は不動産のことでいっぱいだ。
パソコンを立ち上げると、物件情報サイトをいくつも開き、首都圏と郊外を比較してはノートに書き込みをしていた。

「都心ワンルーム…高いな。郊外アパート…ちょっと古いけど利回りは良い…」

妻の奈々子がキッチンから顔を出した。
「また見てるの? 昨日も夜中までやってたでしょ」
「うん、でも楽しいんだよ。やっと具体的に動けそうだから」

村井は今まで投資といえば株式や投資信託しか触れたことがなかった。
しかし株価の上下に振り回される日々に疲れ、もっと実体のある資産を持ちたいと考え始めたのだ。
不動産投資は怖いというイメージが強かったが、セミナーで聞いた数字や事例がその印象を変えてくれた。

──そして今、物件探しの段階に来ている。

午前中、近所のカフェに移動して、ノートPCを広げながら条件を整理する。
「駅から徒歩10分以内」「築25年以内」「価格は5000万〜7000万」「木造でも積算評価が高いもの」
こうした条件をフィルターにかけると、候補は一気に絞られた。

午後、意を決して不動産会社に電話を入れる。

「あの、ウェブサイトで見た川口市の一棟アパート、まだ内見できますか?」

電話口の営業マンは元気よく答えた。
「はい、まだ空いていますよ! もしよければ、今週の水曜日午後はいかがでしょうか?」

水曜の午後、村井は現地に向かった。
川口駅から徒歩7分、小さな二階建てのアパート。築20年、総戸数6戸、家賃は平均で月6万円。
ざっと計算して満室時の家賃収入は36万円。ローン返済と諸経費を引いても月10万円以上が残りそうだ。

営業マンが横で説明する。
「ここは地主さんが高齢で、相続前に売りたいという物件なんです。だから値段交渉も余地がありますよ。
地元の信用金庫でも積算評価が高いので融資が通りやすいでしょう。」

村井は建物を見て回り、メモを取る。
「外壁の塗装は…少し色あせてるな。階段も補修が必要かもしれない。空室は1戸か…」

帰宅後、すぐにExcelを開いて収支シミュレーションを作る。
物件価格 6,000万円、頭金 1,000万円、信用金庫から金利2.0%・期間20年で借りた場合──
毎月の返済額は約25万円、満室家賃は36万円、管理費・修繕積立などを差し引いて手残りは9万円前後。
年間で100万円以上のプラス。
「これなら、まず一棟目としては現実的だな…」と独りごちた。

翌日、村井は信金の窓口を訪ねた。
担当になったのは若いがしっかりした女性だった。
「川口市のアパートでご相談がありまして…」と事情を説明すると、彼女は物件資料を見ながら頷いた。

「このエリアなら積算評価は土地と建物合わせてだいたい物件価格と同じくらい出ます。
お客様のご年収やご資産なら、自己資金を1,000万円入れていただければ、残りはご融資可能かと思います。」

「なるほど…審査はどれくらいかかりますか?」
「通常2週間程度です。ただ、追加書類が必要な場合はもう少しかかることもございます。」

村井は心の中で計算を続ける。
「今の給料で月25万円の返済なら問題ない。家賃の入金があれば手残りも出るし…」

ただ、気になる点もある。
築20年の建物は、あと数年で大規模修繕が必要になるかもしれない。
管理会社に見積もりを取らねばならないし、入居者の入れ替えコストも想定する必要がある。
リスクを減らすために、あらかじめ修繕積立を計画に組み込むのが良いだろう。

家に帰ると、奈々子が夕食を用意しながら聞いてきた。
「どうだった?」
「すごく現実的だったよ。毎月10万円残せる見込み。でも修繕費のことも考えなきゃだな。」
「やっぱり、ちゃんとリスクも考えないとね。」
「うん、もう少し調べてみるよ。」

その夜、村井はまた物件資料とにらめっこしながら考える。
「まずは一棟目、しっかり稼働するものを買って、実績を作る。
その後でメガバンクや地銀を当たって、二棟目・三棟目へ広げる。」

手帳には新たなメモが増えていった。

・現地調査を再度実施。
・管理会社と面談。
・修繕費用の見積もりを取る。
・信金に必要書類を揃えて提出。

気づけば深夜を回っていた。
窓の外には街灯がにじみ、遠くを走る電車の音が聞こえる。
疲れを感じつつも、村井の表情は晴れやかだった。

「俺、もしかしたら本当に経済的自由を手に入れられるかもしれない。」

こうして、38歳の挑戦は新たなステップに進んでいく。

──第3話へつづく

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